「インナーテニス」の輪読のお勧め



南後 浩(S37卒)


 W・T・ガルウェイ著 後藤新弥訳「インナーテニス」の輪読をお勧めします。

その目的は、新チームメンバー一人ひとりの目標感とチームの目標方向の明確化とチームの一体感

づくりです。

W・T・ガルウェイは1938年、サンフランシスコ(米国)生まれ。15歳で全米ハードコート選手権に優勝。

ハーバート大で美学を研究するかたわら、テニス部の主将としても活躍。

東洋思想、特に禅に深い興味を持ち、10年間ハーバード大学で教壇に立った後、ヨガをテニス・レッスン

に導入することを発見。カリフォルニアでレッスン・プロとして独立、スポーツの内面心理にメスを入れる

独特の教授法で世界的な名声を得ている。

卒業後、テニスコーチの体験からこれをテニスに応用し、「インナーテニス」という本を著し、これを元にして

スポーツ心理学の原点とされる「インナーワーク」を70年代に確立し、現在では広く企業の人材開発など

にも応用されています。

押し付け教育に疑問を抱き、人間の自然習得能力や集中力に着目した独自の教育法を打ち立てました。



 「インナーテニス」の骨子です

 ■内側からの変化の時代

   もし能力を十分に発揮していないと感じる個人がいたら、それは自分で自分の潜在能力を制限し、

   妨害しているからだ。人は本来、 働くこともスポーツすることも、もっと思い切りエンジョイできるの

   ではないだろうか。世界のスポーツに大きな影響を与えた「インナー ゲーム」のエッセンスを解説

   する。

   インナーワークの起源

    頑張りすぎると、自然な能力が発揮できない。

    1) 生まれながらにして「すでに備わっている」能力を使えば、人は知識やレッスンではなく

      「自分の体験」によって自然にものごとを学び取ることができる。

    2) 人は本来、働くこともスポーツすることも、もっと思い切ってエンジョイできる。

   セルフ1とセルフ2の発見

    「何も考えない」ときに最高のプレーが生まれる。

    今日でも、ほとんどのスポーツを教えるとき、コーチがまずお手本を示す。

    それから動作を細かく分析して説明し、生徒にいったん頭で理解させてから実行させる。
   
    ガルウェイは、そういった方法論がまったく間違いであることに気がついた。

    彼の主張が典型的に表れる場面のひとつが、生徒の欠点をコーチが指摘し、矯正するときだ。

    欠点を指摘され、それを意識すると動作がぎこちなくなってしまうことは誰でも体験しているだろう。

    欠点の矯正どころか、前には造作もなくできていたことすら、突然できなくなることもある。

    ガルウェイは、この現象がなぜ起きるのかを考えた。そして、実際にコートの上で相手と戦っている

    「アウターゲーム」のほかに、各プレーヤーが自分の心の中で戦っている「インナーゲーム」という

    存在を見出した。「インナーゲームをいかに戦うか」が、彼のライフワークになった。 

● スポーツはものごとを学び取り(習得、学習)、変化(上達、向上)するプロセスを観察するのに、

   最も適した実験場だった。

   「インナーワーク」の実践論は「セルフ1とセルフ2の発見」から成り立っている。

   セルフ1が「ラケットをもっと早く引いて」などと、抽象的な命令を発しているとき、セルフ2はその

   ような命令よりも複雑で精密な仕事と取り組んでいるのだ。

   放物線で飛んでくるボールの現在位置を測定し、筋肉組織に対して何百と言う詳細な命令を同時に

   発して、ネットの向こう側にボールを打ち返すように肉体を動かしている。

   あらゆる証拠は、セルフ1が命令をせず、セルフ2が自由奔放に、束縛なしにボー利を打つときに、
 
   テニスでは最高の能力を発揮できることを示している。

インナーとアウター

    否応なしにプレーしている二つのゲーム

    インナーワークのゴールは人の内側の能力を発見して、そのすべてを発揮する「妨げる」に

    なるものを「限りなく減少させる」ことだ。対して一般的なアウターゲームは、外側の障害を克服

    して外側の目標を達成することだ。この二つのゲームには互いに関連がある。

    個人でもチームでも企業でも、外側からの大きな挑戦を受け止めるには、内側の障害を最小限に

    留めることが重要になる。二つのゲームの関係は、人間の両足に似ている。

    両足の長さがほぼ同じなら、人生は歩きやすい。

    にもかかわらず、特に西欧文化はこれまでいかにアウター・ゲームをマスターし、外側から世界を

    かえるかに重点を置きすぎてきた。科学や工業技術に偏向し、それを現代の過多の情報が加速

    し、我々はアウターゲームの側の足だけを長く伸ばし過ぎてきた。インナーワークに関する扱いは

    まだまだ未成熟だ。

「セルフ2」は、旧皮質、原始脳、深層意識であり、人間そのものの「実体」である。

    例:チクセントミハイ、ユング、禅、仏教(アラヤ識、他力他)
                                 


  以上